経済・経済・金融の基礎知識

日本の戦後の発展は、いうまでもなく、重化学工業を中心にした発展でした。この発展の条件が出たのは戦後はじめてなのです。戦前には重化学工業発展の余地は、十分でなかったわけです。そのいちばん大きい理由は、資源関係で大きな制約をうけていたからです。

それが戦後は、日木にとってはむしろ有利に各国の資源が開放されたのですね。そうすると、そういう重化学工業発展の条件を備えた日本は、急激に伸びえたわけです。その段階においては、日本経済の発展が重化学工業中心に伸びたという点からいうと――大体昭和三〇年代から四〇年早々くらいまでは、少青年期であったといってよいでしょう。

ですから、この期間は急速に伸びてきたのです。それが、一応壮年期に達したというのが現状だと私は思うのです。そうしますと、伸び率としては、与えられた条件からみても、だんだん伸びうる余地が小さくなるわけです。また、分母が大きくなったという面からいっても、だんだん伸び率は落ちてくるとみざるをえないわけです。

syokumin4686これは当然だといってよいでしょう。しかし、そこでぼくが強調している点は、そういう形で伸び率が落ちるとはいっても、景気が悪くなる、あるいは景気が鈍化する、ということとは事情が違うのだ、という点なんです。というのは、一般の人がいっている景気観は、二つの要因をごっちゃにしていると思うのです。

ある国の経済成長率が伸びれば、景気がいいのは当然ですけれども、伸びが落ちてくれば、景気はそれだけ必ず悪くなる、というものではないということです。

また、 一般にいわれている景気は、景気循環論から景気がいいとか、悪いとかいっているわけです。元来、景気がいいとか、悪いとかいう感覚は、むしろ景気の循環を中心にしていうことばなんですね。ところが、その国の成長のテンポからくる発展のカーブというものは、これは相当長期的な動きであって、ある時期がくれば当然、なだらかなカーブになるはずなんです。

成長というものは、急速に伸びる時期もあり、また一段と落ちるときもあるだろうが、結局はだんだん伸び率が落ちてくる、そういうカーブを描くはずです。しかし、成長が壮年期にはいってくるとたとえばいまアメリカでは五、六%の伸びになると好景気なんです。

それがいままでの日本では、 一〇%に落ちると不景気感があったというのは、経済の段階による差があるわけです。しかし、これからの日本経済は、分母が大きくなる。ですから成長率は落ちても、絶対量は大きいものですから、そのほうからいうと、景気が鈍化したとか、あるいは景気が転換期にきた、という筋のものじゃないと思うのですね。

循環論的波からいうと、その波が大きく上昇してきたものが、やがてだんだん落ちてくれば、景気は頂点を打ったとか、悪化したという感覚になるわけですけれども、経済成長カーブとは、その点の区別が、今後の景気をみる場合に重要ではないかといっているわけです。